俺の株式投資

no investment, no return

PERは市場を予測できるか

市場全体のPERが,株価水準*1の高低を表すという考え方がある(例えば*2).

このような考え方で有名なのは,ドットコムバブルを予想したとされる,「根拠なき熱狂」の著者ロバート・シラーCAPEであろう.CAPEはインフレ率調整後のPERの10年移動平均である.(S&P500が主な対象として語られる.)

その考え方に従えば,PERが高ければ市場は「過熱」しているためそのうち下落し,逆に低ければ,やがて上昇する.なんとなく直感的に正しい気がするが,これはつまり予測可能性を言い表している.テクニカル信者でないのなら,果たしてそんなことが可能なのか? と疑問に思わなければおかしい命題だ.

そして,そんなことはできない,と明確に否定しているのは,ビクター・ニーダホッファー(Victor Niederhoffer)である.彼は著書「Practical Speculation」で,PERとそれ以降の市場リターンに相関は無い,と述べている.

本書にあるニーダホッファーのデータ分析によれば,S&P500の年初のPERと,その年のリターン,5年後のリターン,9年後のリターンとの相関はどれもランダムとみなせる.(回帰式のR2はそれぞれ0.02,0.001,0.03.)

In sum, our studies show the relation between P/Es and returns from 1950 to 2001 is completely consistent with randomness. We are not alone in our conclusion about the lack of a strong relation between P/Es and market returns. Kenneth L. Fisher and Meir Statman, in a definitive study covering the years 1872 through 1999, also concluded that P/Es provide unreliable forecasts of future returns. "There is no statistically significant relation between P/E ratios at the beginning of the year and returns during the following year, or during the following two years," they wrote.

Practical Speculation

上記のFisherとStatmanの論文はここで読める.

また,シラーのデータ分析自体がそもそも信用できない,というニーダホッファーの主張は,著書以外にも,例えばThe Consilience, from Victor Niederhoffer : Daily Speculationsに書いてある.

ちなみに,市場全体のPERが市場の予測に寄与するかという話と,(相対的に)低PERの銘柄を機械的に選ぶバリューアノマリーが有効であるかという話は意味が全く違うので,注意が必要である.